人づくり・技術伝承対談コラムベテラン職人×若手職人CROSSTALK次世代の研削マスターへの技術伝承 人づくり・技術伝承対談コラムベテラン職人×若手職人CROSSTALK次世代の研削マスターへの技術伝承

研削マスターズが誇る高い技術力は、創業以来、技術研鑚にたゆまぬ努力を続けてきた職人たちによって支えられています。
この道30年のベテラン職人・岩田守と、現在経験年数5年の角鷹也の2人に、それぞれがこれまで歩んできた道と、次世代の職人育成や、更なる技術力向上に向けた熱い思いについて語り合ってもらいました。

ベテラン代表

岩田 守

加工品事業本部 製造2課 主任技師

工業高校を卒業後、株式会社守谷刃物研究所に入社。
汎用機械・NC工作機械を使った機械部品の製造に携わり、現在は若手作業者の育成指導中。

若手代表

角 鷹也

加工品事業本部 製造2課1係

入社後、平面研削工程で加工員として従事。
現在は岩田より難削材や高精度品加工の指導を受け、技能継承に取組み中。
技能向上に対する意識が高く習得が早いため、研削技能者として成長を期待される人材。

現在の仕事内容と、お二人の関わり方について教えてください。

岩田
岩田

平面研削盤という工作機械を使った研削加工を担当しています。
加工物を移動させながら回転する砥石に表面を当てることで、平面度を高くする加工技術になります。
工作機械を使うものの、仕上がりの良し悪しを左右するのは技術者の技術力にかかっているので、経験がものを言う職人の領域です。
ひとつひとつ人間の手によって加工するので、この道30年の私でも、加工にはそれ相応の時間がかかります。
オーダーの内容にもよりますが、手間のかかるものだと丸一日くらいはかかります。

角

私は岩田さんの指導を受けながら、同じく平面研削盤による研削加工を担当しています。
まだまだ経験が浅いので、同じ加工をするにも岩田さんの1.5倍から2倍の時間がかかりますね。
これまで経験のない加工技術に挑戦するときは、岩田さんに相談しながら、助言をもらいながら作業を進めています。
とても頼りになる先輩です。

「難削材の研削加工」は守谷刃物研究所の得意分野ですが、どのような点が強みですか?

岩田
岩田

そうですね、やはり金属というのは「堅いものほど削りにくい」という性質があります。
高硬度な材料を加工すると、通常の工具や条件では削れず、すぐに摩耗して使えなくなったり、また特殊な材料は加工の際に発生する熱が吸収されずに内にこもってしまうので、加工中に工具が変形してしまうこともあります。

岩田
岩田

弊社にはこれらの難削材の加工実績が多くありますので、材料の特性を理解した上で最適な加工ができるよう、日々技術研鑽に励んでおります。
お客様から難しい材料での加工を相談された際にも、簡単にNOとは言わず、まずはお引き受けするようにしています。
どうやったら要求を満たせるか試行錯誤しながら挑戦する姿勢を大切にしてきましたし、だからこそ、技術力を磨くことができていると自負しています。

お二人は親子ほど年の差がありますが、日ごろどのように指導しているのですか?

岩田
岩田

技術の伝承法については、「一緒にやって見せて教える」、が基本です。
それ以外にも、座学による技術指導にもちょうど取り組み始めたところです。
私が作ったオリジナルテキストがあるのですが、それを使って1時間程度の講習をやっています。
大体25人くらいの部下がいるので、仕事の都合をつけて出てもらうようにしています。

角

私はまだその講習に出れていなくて...
テキストだけ先に見せてもらったんですが、すごく難しそうでした!

岩田
岩田

だからこそ教えてるんだよ。
加工したことのない材料のことや技術のことも、先に座学で学んで予備知識を付けることが大事。
予備知識があると、仕事で行き詰った時のヒントになることがある。
「あ、そういえば岩田があのときあんなこと言ってたっけな...」と思い出してもらえたら、と思って座学をやっています。

角

なるほど、そういう意図で実施されてるんですね。
確かに、日々いろいろな壁にぶつかる中で「引き出しの多さ」はすごく大事だなって痛感しています。

自分がつまづいた時、岩田さんに相談すると「こうやったらできるよ」とすぐ教えてくださるので、本当に有難いですし、さすがだなって尊敬します。それと同時に、まだまだ自分は引き出しが少ないなあと。

角

加工にも様々な方法があって、材料と研削盤の隙間を真空にしてくっつける「真空チャック」や、材料を冷却して固定する「冷凍チャック」などの技術も岩田さんから学びました。
「こういう場面ではこの方法が最適だ」とひらめくには、やはりもっと多くの経験を積まないといけないと思っています。

ただ、分からないからといってすぐ聞くのはなく、まずは自分の頭で手段を考えるようになりました。岩田さんもそのような指導の仕方をしてくださるので。

ベテランの岩田さんですが、若い頃は角さんと同じような苦労がありましたか?

岩田
岩田

もちろん。若い頃はうまくいかないこともたくさんありました。
ただ、できないことはできるようになるまでやり続けた、という自負はありますね。
どんなに頑張ってもどうしてもお客様の要望に応えられなかったこともあります。
そういうときは、休みの日でもずっとそのことばかり考えていました。
元々ネガティブな性格なんでね(笑)。

角

僕らから見たら大ベテランの岩田さんも、若い時から苦労しながら努力を重ねてこられたんですね。

本当に、岩田さんは何でも知っているすごい先輩です。
砥石の知識から機械の構造まですごく詳しく知っているし、機械の調子が悪い時も岩田さんに聞けばなんとかしてくださる、っていう絶大な安心感があります。

岩田
岩田

昔はできないときは夜中まで残ってでもやっていたこともありました。
どうしてもやりたくてね。

ただ、この「できないかもしれない」という不安やプレッシャーを乗り越えて「できた!」となった時のあの達成感。
この瞬間を、若い人たちにもぜひ味わってもらいたい。

角

そうですね、大変な思いをして、最終的に思い通りの加工ができた時の達成感はやはり大きいです。
以前は超硬素材の加工ではよく欠けを出してしまっていたんですが、経験を積んで、最近では欠けを出さずに加工できるようになってきました。

岩田
岩田

角くんはとても素直な性格だし、呑み込みが早いんですよ。
私が教えたことを、ちゃんと自分のものにしてくれるというか。
コミュニケーション能力にも長けているし、考えてみると悪いところが見当たらないなあ(笑)。
本当に私の子どもと同じくらいの年齢で、親子ほど年が離れているんだけどね。

これからもどんどん伸びるだろうし、いい研削技術者になると思います。

角

ありがとうございます!
自分はまだまだだと思っていますが、期待に応えられるよう頑張ります!

岩田
岩田

やっぱり素直さが一番大事。
それと、新しいことにもどんどんチャレンジしていこうというハングリー精神が必要です。もっと技術を向上させたい、という気持ち。
同じ係の中で、自分が一番技術力の高い技術者になってやるぞ!とか。
難しいオーダーが来たときにも、自分がやってやる!と食らいつくくらいの気持ちがある人が伸びると思います。

角

僕もいつかそうなりたいですね。
まだまだ学ぶべきことは山ほどあって、同じ工具を使ったとしても、加工の方法は数えきれないほど種類があるので、まずはそこを極めていきたい。そして今後はさらに高い技術力が求められる「プロファイル研削盤」を使えるようになりたいです。

岩田
岩田

大丈夫、角くんならできる。
大いに期待しています!